読みもの
JOURNAL
DESIGN THAT FITS
2026.08.19
THINKING
「いいデザイン」より、「似合うデザイン」。
「いいデザイン」より、「似合うデザイン」。
「おしゃれにしたい」
「高級感を出したい」
「今っぽくしたい」
デザインのご相談をいただくと、こうした言葉を聞くことがあります。
もちろん、どれも大切なことです。
でも、私はそのままデザインを始めることは、あまりありません。
その前に考えたいことがあります。
それは、本当にそのブランドに似合っているだろうか。

好きなデザインと、必要なデザインは違う。
私自身、好きなデザインはあります。
余白のあるデザインも好きですし、シンプルなタイポグラフィや、少し海外を感じる空気感にも惹かれます。
でも、それをすべての仕事に持ち込むわけではありません。
自分が好きだから。
流行っているから。
競合がやっているから。
それだけで選んでしまうと、綺麗なものはできても、そのブランドらしいものにはならないことがあります。
たとえば、長い歴史を持つ会社を、新しく見せたいからといって、すべてを今っぽく変えてしまう。
それまで大切にしてきたものまで消してしまったら、新しくはなっても、その会社である意味が薄くなってしまうかもしれません。
反対に、新しく生まれたブランドなのに、安心感を出そうとして無難にまとめすぎれば、本来持っていた面白さがなくなってしまうこともあります。
だからデザインを考えるとき、最初から「どんな見た目にするか」を決めないようにしています。

そのブランドには、すでに何かがある。
会社や商品について話を聞いていると、面白いことがあります。
本人たちは特別だと思っていないことが、外から見ると、とても魅力的だったりする。
ずっと続けてきたこと。
お客様からよく言われること。
なぜか昔から変えていないこと。
社長が何気なく話した一言だったり、商品のつくり方だったり、スタッフの方たちの空気だったり。
ブランドの「らしさ」は、必ずしもロゴやブランドカラーの中にあるわけではありません。
むしろ、まだデザインされていないところに隠れていることの方が多いように思います。
だから私は、新しく何かを足す前に、まず「すでに何があるのか」を探します。

「らしさ」は、つくるものなのか。
ブランディングというと、新しい世界観をつくることのように聞こえるかもしれません。
でも実際には、ゼロから人格をつくるような仕事ではないと思っています。
その会社が歩いてきた時間。
商品をつくった理由。
そこで働く人たち。
お客様との関係。
すでに積み重なっているものの中から、大切なものを見つける。
そして、伝わりにくくなっているものを整理して、必要なものは残し、必要のないものは削る。
言葉や写真、色、文字、形を使って、見えるようにしていく。
私にとってブランディングは、「らしさをつくる」というより、「らしさを見つける」仕事に近いのかもしれません。

流行は使う。でも、流行には合わせない。
もちろん、デザインにも流行があります。
色、フォント、写真の撮り方、Webサイトの動き。
数年前には新鮮だった表現が、いつの間にか当たり前になっていることもあります。
新しいものを見るのは好きですし、必要であれば積極的に取り入れます。
ただ、流行しているという理由だけで使うことはありません。
大切なのは、
「今っぽいか」ではなく、「このブランドに必要か」。
流行は、ブランドを表現するための手段のひとつ。
ブランドそのものが、流行に合わせて形を変え続ける必要はないと思っています。

デザインは、服に少し似ている。
デザインを考えていると、ときどき服に似ていると思うことがあります。
どれだけ素敵な服でも、誰にでも同じように似合うわけではありません。
その人の雰囲気や体型、年齢、過ごす場所によって、似合うものは変わります。
ブランドも同じです。
ミニマルなデザインが似合うブランドもあれば、賑やかな方が魅力的なブランドもある。
高級感が必要な商品もあれば、少しくらい不格好な方が親しみを感じる商品もある。
余白をたっぷり使う方がいい場合もあれば、情報をしっかり見せることが誠実な場合もあります。
どちらが「いいデザイン」なのか。
たぶん、答えはありません。
そのブランドに似合っているかどうか。
私にとっては、その方がずっと大切です。
「私はこれが好き」より、「あなたにはこれが似合う」。
デザイナーには、それぞれ個性があります。
作品を見ただけで「あの人のデザインだ」と分かることもあります。
それは、とても素敵なことだと思います。
でも、私自身は少し違うところを目指しています。
Spark Designの仕事を並べたとき、すべてが同じテイストである必要はないと思っています。
かわいいものもあれば、静かなものもある。
力強いものもあれば、少しユーモアのあるものもある。
それぞれのブランドが違うのだから、出来上がるデザインも違っていていい。
「私はこういうデザインをします」ではなく、
「あなたには、これが似合うと思います。」
そう言えるデザイナーでありたいと思っています。
似合うものを、一緒に見つける。
最初から答えが見えている仕事は、ほとんどありません。
話を聞いて、調べて、並べて、削って、また考える。
そうしているうちに、バラバラだったものの中に一本の線が見えてくることがあります。
「これなら、この会社らしい。」
「これなら、この商品がもっと好きになれそう。」
そんな答えが見つかったとき、デザインを始める前より、そのブランドのこれからが少し楽しみになっている。
それが、私にとっての「いいデザイン」なのかもしれません。
いいデザインより、似合うデザインを。
誰かの正解を持ってくるのではなく、
そのブランドの中にある答えを、一緒に見つけていく。
Spark Designが大切にしていることのひとつです。
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